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東京地方裁判所 平成6年(ワ)25203号 判決 1995年9月25日

原告

日本ヴァイニッヒ株式会社

右代表者代表取締役

森﨑章

右訴訟代理人弁護士

高階貞男

田端聡

岩佐嘉彦

木村雅史

被告

江戸川ユニテック株式会社

右代表者代表取締役

市川英治

右訴訟代理人弁護士

石井嘉夫

井上勝義

厚井乃武夫

主文

一  被告は原告に対し、別紙物件目録記載の機械を引き渡せ。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告は木工機械の購入、販売業等を営む会社であり、被告は木製品の加工販売等を営む会社である。

2  原告は、平成六年五月二三日、訴外静岡機械工業株式会社(以下「静岡機械」という。)との間で、木材の加工機(精密自動多軸かんな盤)である別紙物件目録の機械(以下「本件機械」という。)を次の約定で販売する契約を締結した。

(一) 代金 二四四一万一〇〇〇円(内消費税七一万一〇〇〇円)

(二) 支払日及び支払方法 契約時に平成六年七月三一日を支払期日とする額面八〇〇万円の約束手形、商品受渡後一五日以内に同年一〇月三〇日を支払期日とする額面一六四一万一〇〇〇円の約束手形を振り出す方法によって支払う。

(三) 受渡場所 被告いわき工場(福島県いわき市泉町下川字井戸内一二三所在)

(四) 所有権の留保 買主の支払義務が完了するまでは所有権は売主に帰属するものとし、買主が代金全額の現金決済を完了した時点をもって、自動的に買主に移転するものとする。

(五) 期限の利益喪失 一回でも支払いを遅滞したときは当然に期限の利益を喪失し、残金全額を直ちに支払う。

(六) 契約の解除 右の場合、売主は催告を要せず直ちに契約を解除でき、右解除がされたときは、買主は直ちに物品を売主に返還する。

3  原告は右契約に従い、平成六年六月一五日に被告のいわき工場に本件機械を納入し、同年七月六日に据付、試運転を完了した。

なお、右契約によれば、静岡機械は、契約時及び商品受渡後一五日以内に手形を振り出すこととなっているが、実際上は商品受渡後に同年一〇月三一日を支払期日とする額面一〇〇〇万円の約束手形二通及び四四一万〇五七〇円の約束手形一通が原告に対して振出、交付された。

4  静岡機械は、同年一〇月三一日、原告に振り出した三通の手形をいずれも支払わなかったので、原告は同年一一月一七日、静岡機械に対して右売買契約を解除する旨の意思表示をした。

5  被告は、本件機械をいわき工場において占有している。

6  よって、原告は被告に対し、所有権に基づき本件機械の引渡しを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、5の事実は認める。

2  同2ないし4の事実のうち、本件機械が平成六年七月六日までに被告いわき工場に据え付けられたことは認め、その余は知らない。

三  抗弁

1  被告と平安シズテックとの売買契約

(一) 被告は、平成五年一二月一三日、訴外株式会社平安シズテック(以下「平安シズテック」という。)から、本件機械を含む住宅用木材加工のプレカットシステムを、合計六五〇〇万円(内本件機械分は二六〇〇万円)で購入する売買契約を締結した。

(二) 被告は、平成六年七月五日ころ、被告いわき工場において、平安シズテックから本件機械の納入設置を受けた(現実に設置作業を行ったのは平安シズテックの履行補助者である原告であった。)。

(三) 被告は、平安シズテックに対し、右代金六五〇〇円及びこれに対する消費税一九五万円を次のとおり分割して支払った。

平成五年一二月二四日二〇〇〇万円

平成六年六月二七日 二〇〇〇万円

同  年八月三一日 一二五〇万円

同  年九月三〇日 一〇〇〇万円

同  年一〇月二五日 四四五万円

2  承継取得(転売権限の授与)

被告と平安シズテックとの右売買契約が締結された後に、原告は本件機械が被告に転売されることを前提として、これを静岡機械に売却したから、原告は静岡機械に対し、本件機械をその名で他に転売する権限を授与していたことが明らかである。

このように売主が買主に転売権限を認めた以上、売主、買主の内部的な所有権留保を理由に、当該商品を買受けた転買人の所有権取得を否定することは許されない。

したがって、仮に原告と静岡機械との間に所有権留保の特約があったとしても、原告は被告に対してこれを主張することができず、被告は本件機械の所有権を取得した。

3  即時取得

右のとおり被告は、平安シズテックから本件機械を購入し、その引渡しを受けたので、仮に平安シズテックが所有権を取得していないとしても本件機械の所有権を即時取得によって取得した。

4  権利の濫用

原告は被告の知らない間に、静岡機械に対して何の信用調査を行うこともなく本件機械を同社に売却し、また同社との間で定めた支払条件さえ自らの判断で遅らせて何の措置も取らなかった。このような場合、静岡機械の倒産による危険を被告に負担させるのは、被告が代金を完済しているところからして極めて不当であり、権利の濫用に該当する。

四  抗弁に対する原告の認否と反論

1  認否

(一) 抗弁1のうち(二)の事実は認め、その余は知らない。

(二) 同2の事実のうち、被告と平安シズテックとの売買契約の後、原告が本件機械が被告に転売されることを前提として、これを静岡機械に売却したことは認め、その余は否認する。

(三) その余の抗弁事実は争う。

2  反論

(一) 本件機械の売買に至る経緯

本件機械の売買に関する交渉は当初、原告と被告との間において行われ、原告は被告に対して、本件機械を直接販売する前提で被告と交渉を行っていたが、平成五年一二月一日に至り、被告から原告に対して本件機械の購入は平安シズテックを通じて行いたいとの申入れがされるに至った。

被告の説明によれば、本件機械はプレカットシステムのラインの一部を構成しているところ、被告は右ラインを構成する機械のうち、本件機械以外のものについては、平安シズテックから購入する予定であるから、購入の窓口を一本化したいとのことであった。

原告はこのような申入れを拒否したものの、同年一二月二二日に被告が本件機械について、すでに平安シズテックとの間で同月一三日付で売買契約が成立しているとの説明をしたことから、やむなく右申入れを承諾した。

そして、原告は平安シズテックと契約をする準備をしていたところ、契約締結の直前になって平安シズテックから、買主の名義を静岡機械にしてほしい旨の要請を受けた。原告は平安シズテックと静岡機械とは事実上は同一の会社であったことからこれを承諾した。

以上のとおり、本件機械の取引の実態は、原告と被告との間の売買であり、静岡機械と平安シズテックは単に形式的に中間に入ったに過ぎない。

(二) 転売権限の授与について

原告は本件機械を最終的に被告が取得することを知りながらこれを静岡機械に売却したので、たしかに静岡機械に対して本件機械を転売する権限を授与していたことになるが、原告は静岡機械に対して所有権を留保したままの条件付権利を転売する権利を授与したに過ぎず、被告はかかる条件付権利を取得したに過ぎない。

(三) 即時取得について

被告は本件機械の即時取得を主張するが、被告が平安シズテックが本件機械の所有者であると信じるについては、次のとおり過失があるというべきである。

(1) 本件機械のような高価な機械の売買については、所有権留保の特約が付されるのが通常であり、これは業界の常識である。

(2) 前記(一)のとおり、本件売買はもともと原告と被告間の取引であり、その交渉の際、本件機械の所有権が原告に留保されることは当然の前提とされていた。そして、平安シズテックは形式的に右売買の間に入ったに過ぎないから、被告は、原告が平安シズテックないし静岡機械に売却する際に所有権留保特約付で売却したことを知っていたか、知り得べきであったというべきである。

(四) 権利の濫用について

原告は所有権留保特約付で被告に本件機械を売却する予定であったのに、被告の希望によって中間者を介在させたに過ぎないから、被告に対して所有権留保特約の効力を主張することはなんら権利の濫用にあたらない。

被告が当初の予定どおり原告と直接取引をしておれば、中間者の倒産という問題は生じなかったのであるから、取引による危険は被告が負担すべきである。

五  原告の反論に対する被告の認否

被告は静岡機械の存在すら知らないし、原告が静岡機械に対して、所有権留保特約付で売却したことも知らなかった。また、被告と原告が交渉する際に、所有権留保特約付で売買がされることが前提とされたことはない。

第三  当裁判所の判断

一  請求原因1、5の事実と原告が被告いわき工場に本件機械を据え付けたことは当事者間に争いがない。

右争いのない事実と証拠(甲一、二、三の1ないし3、四の1、2、五ないし一四、乙一、二、四の1ないし5、五、六、証人高橋良彰、同佐賀司)によれば、次の事実が認められる。

1  原告は木工機械の輸入、販売業等を営む会社であり、被告は木製品の加工販売等を営む会社である。

2  被告は、被告いわき工場に住宅木材加工用のプレカットシステムのラインを作ることを計画し、その一部を構成する精密自動多軸かんな盤を原告から購入しようと考えた。

そこで、被告は原告からカタログを取り寄せたり、原告担当者佐賀が被告いわき工場に赴くなどして両者は機種の選定等の交渉を行い、原告は平成五年一一月九日ころ及び同月二二日ころに被告に対して見積書を交付した。右各見積書には、支払条件について、「契約時三分の一約手(契約日起算九〇日)、納入時(または納入後一〇日以内)残金約手(納入日起算九〇日)」と記載されていた。

3  右交渉の際には、原告が被告に対して直接本件機械を売却することが前提とされていたが、同年一二月一日ころ、被告担当者高橋は、原告担当者佐賀に対し、本件機械を平安シズテックを通じて購入したいとの申し入れをした。

それは、プレカットシステムのライン本体は株式会社平安コーポレーションが納入し、風送設備、集塵装置等の付帯設備は平安コーポレーションの関連企業である平安シズテックが行うことになっており、平安コーポレーションや平安シズテックから、本件機械を含めた付帯設備を一括して購入してほしいとの申し入れがなされたことが原因であり、被告としても一括購入を前提として他の付帯設備を含めて値引きの交渉ができるとの期待からこれに応えることにしたものであった。

これに対して、原告は、原告の販売方法は顧客に対する直接販売が原則であり、中間者を介入させると中間者が取得するマージンを考えなければならないことからこれを渋り、右申入れ後も、被告に対して、原告から被告に直接販売する場合の値引後の最終的な価格について同月九日付で見積書を送付した。右見積りによると、本件機械の販売価格は二五五〇万円(消費税は別途七六万五〇〇〇円)とされ、支払条件は先の二通の見積書と同様の記載がされた。

しかし、被告は同年一二月一三日、平安シズテックとの間で、本件機械を含む付帯設備一式について抗弁1(一)記載の売買契約を締結してしまい、同月二二日に、被告担当者高橋は原告担当者加賀に対して、平安シズテックとの間に作成された契約書を示して、その旨説明した。そこで、原告は被告に対して直接本件機械を売却することを諦め、これまで取引関係のなかった平安シズテックと交渉するようになった。

4  原告は、平安シズテックと売買価格について交渉し、平安シズテックが中間マージンの取得を希望して、売買価格の大幅値下げを主張したことから、右交渉は難航したが、結局、原告が平安シズテックに対して、本件機械を二三七〇万円(消費税は別途七一万一〇〇〇円)で売却することで合意した。

ところが、契約締結日とされた平成六年五月二三日の直前になって、平安シズテックから原告に対して、売買契約の当事者を静岡機械にしてほしいとの申入れがあった。

平安シズテックの説明によれば、平安シズテックは他の付属設備についてもすべて静岡機械から購入することにしているので、本件機械についても同様にすることを希望しており、静岡機械から平安シズテックへの転売については内部的に処理するとのことであった。

平安シズテックは静岡機械の子会社であったから(平安シズテックの本社は静岡機械の静岡営業所の中にあり、また、平安シズテックの代表取締役は静岡機械の関係者である。)、原告は特にこの措置を問題にすることもなく、右申入れを容れることにし、平成六年五月二三日に、先に平安シズテックとの間で合意したものとまったく同一の内容で、静岡機械との間に、請求原因2のとおり本件機械を代金完済まで所有権を留保する特約付で売却する旨の売買契約を締結した。

5  右契約に基づき、原告は、平成五年六月一五日、被告いわき工場に本件機械を納入し、同年七月四日から同月六日までの間に据付及び試運転を完了した。

6  原告と静岡機械との間の契約では、代金支払いのために、契約時に平成六年七月三一日を支払期日とする額面八〇〇万円の約束手形が、商品受渡後一五日以内に同年一〇月三〇日を支払期日とする額面一六四一万一〇〇〇円の約束手形が振り出されることになっていたが、静岡機械の希望により、実際には商品受渡後に同年一〇月三一日を支払期日とする額面一〇〇〇万円の約束手形二通及び四四一万〇五七〇円の約束手形一通が原告に対して振出、交付された。

ところが、静岡機械は、右同日の決済を控えた同月二九日に債権者集会を開いて事実上倒産し、右手形は不渡りとなった。平安シズテックも静岡機械と同時期に倒産した。

原告は同年一一月一七日、静岡機械に対して本件機械の売買契約を解除する旨の意思表示をした。

7  一方、被告と平安シズテックとの間の売買契約に基づく付帯設備一式の代金六五〇〇万円の支払いは、契約時三分の一、納入時三分の一、検収後三分の一の支払いとされていたところ、被告は平安シズテックに対し、次のとおり右代金及び消費税を支払った。

平成五年一二月二四日二〇〇〇万円

平成六年六月二七日 二〇〇〇万円

同  年八月三一日 一二五〇万円

同  年九月三〇日 一〇〇〇万円

同  年一〇月二五日 四四五万円

平安シズテックと被告との売買契約には、代金完済まで所有権は平安シズテックに留保されるとの特約が付いていた。

8  本件機械のような高額の機械は、所有権留保特約付の分割払いの約定で売買される例が多数であり、その際には手形が振り出されることが多い。

二  右認定事実によれば、被告は本件機械を占有しているところ、原告は所有権留保付で静岡機械に対して本件機械を売り渡し、静岡機械が代金を支払わず契約が解除された以上、原告は留保された所有権に基づき被告に対して、その引渡しを求めることができる。

三  そこで、被告の抗弁について検討する。

1 転売権限の授与について

まず、被告は、原告は本件機械が転売されることを前提として、これを静岡機械に売却したものであるから、原告は静岡機械に対し、本件機械をその名で他に転売する権限を授与したことになり、売主、買主の内部的な所有権留保を理由に、当該商品を買受けた転買人の所有権取得を否定することは許されないと主張する。

右主張は、転売を容認した以上、原告(売主)は、買主に対して、転買人に無条件の所有権を移転し得る権限を授与したとの主張と解されるが、通常、売主は自己の債権回収を図るため、所有権留保付での転売を容認しているに過ぎないものと解され、本件においても、原告において、原告に留保された所有権が転売によって消滅することを承認する意思を表示したことを認めるに足りる証拠は存在しない。

したがって、この主張には理由がない。

2 即時取得について

一で認定したところからすると、本件のような高額な機械は、所有権留保付で売買される例が多数であり、代金の支払いのために手形が振出交付される場合が多いこと、原告と被告は、当初原告が被告に対して本件機械を直接販売することを前提として交渉を継続しており、その際、原告から被告に対して交付された三通の見積書にはいずれも支払条件として、契約時に代金の三分の一を約束手形(支払期日は契約日から九〇日後)で支払い、残金は納入時(または納入後一〇日以内)に約束手形(支払期日は納入日から九〇日後)で支払う旨が記載されていたのであるから、被告は右記載から、原告と売買契約を締結する際には、支払方法は分割弁済であり、代金完済まで所有権が留保されることを知り得たと解されること、原告が被告と直接売買せずに、平安シズテックに本件機械を売却し、平安シズテックが被告に対してこれを売却することとしたのは、もっぱら被告の都合と希望によるものであるから、被告は、原告と平安シズテックとの売却条件が、価格の点はともかくとしてその余の点については被告に対するものと同様であることを知り得たと解されること、被告が平安シズテックから本件機械を購入した際に締結した売買契約においても、代金完済まで所有権が留保される特約が付いていること、被告から原告に対して、原告と平安シズテックとの間の売買条件を問い合わせることは容易であったと解されること、といった事情が存在し、右事情からすれば、被告は本件機械の引渡しを受ける際、平安シズテックが所有権留保付で原告から買い受けたことを知らなかったとしても、これを十分知り得たし、この点につき平安シズテックに確認すべきであったというべきであり、これを怠った被告には過失があるといわなければならない。

被告は、原告は静岡機械に対して所有権留保付で売却したものであり、被告にとって静岡機械の存在は知り得なかったと主張するが、前記のとおり被告は原告が所有権を留保して本件機械を販売したこと、そのため平安シズテックが所有権を留保された権利しか取得していないことを知り得たのであるから、静岡機械の存在を知らなかったとしても、過失があるといわなければならない。

したがって、即時取得の抗弁は認められない。

3 権利濫用について

本件では、原告が平安シズテックを通じて被告に本件機械を販売することになったのは、被告が付帯設備を一括して購入してほしいとの平安シズテックらの希望に従うとともに自らも他の付帯設備を含めて値引き交渉を有利に行えるとの期待のもとに、原告から直接購入することを取り止めたことが原因であり、原告は被告との直接取引を望んでいたこと、原告は被告の希望に従って平安シズテックに本件機械を売却することにしたものの、原告と平安シズテックとは本件に至るまで取引関係はなく、平安シズテックの要求により大幅な値引きを余儀なくされたこと、前述のとおり本件機械の所有権が原告に留保されていることを被告において知り得たこと、原告との契約締結の直前に平安シズテックから静岡機械に買主が変更されたが、原告と静岡機械との契約は、原告と平安シズテックとの契約とまったく同一内容であり、平安シズテックは静岡機械の子会社であって静岡機械と同時期に倒産しているので、仮に原告が平安シズテックに販売していたとしても、原告は本件と同様に被告に対して所有権に基づき本件機械の引渡しを請求せざるを得なかったものと解され、買主の変更により被告が特に不利な立場に置かれたものではないこと、また静岡機械は契約どおりの条件の手形を交付せず、交付した手形の支払期日の直前に事実上倒産したという経緯からすれば、平安シズテックないし静岡機械は原告と売買契約を締結した当初から原告に対する支払いが危ぶまれるような経営状況であったと推測され、平安シズテックないし静岡機械はこれを秘して原告から本件機械を購入したと解されること、といった事情が存在し、右事情からすれば、原告が契約時に受領するはずであった八〇〇万円の約束手形を受領せず、製品納入後になって支払期日も遅れた手形を受領したという債権管理に甘さがあった点や、被告が平安シズテックに代金を完済していることといった事情を考慮しても、なお原告が留保された所有権に基づき被告に対して本件機械の引渡しを求めることを権利の濫用であるとまでいうことはできない。

したがって、被告の抗弁にはすべて理由がない。

四  以上によれば、原告の請求には理由があるからこれを認容することとし、民訴法八九条、一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官小野憲一)

別紙物件目録<省略>

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